夜と紅と蒼と……
蒼太の好意を利用して、らくになろうとしてるだけじゃないのか。
ただ、寂しかっただけじゃないのか……自分への疑念は尽きない。
「あーもう!! やめたやめた」
考えだすとキリがない。紅葉が雑念を振り払うように頭を振っていると、不意に、携帯の着信音がなった。
『誰だろ?』
紅葉の携帯は、心配する両親がせめて連絡は取れる様にと、家を出る時に持たせてくれたものだ。
そもそも、人に番号を教える事も滅多になかったから、知ってる人間は限られている。
【アキラ】
画面に表示されたのは懐かしい名前。それを確認すると、紅葉はすぐに電話に出た。
「お~!! 紅葉。元気かー?」
「うん。あいかわらず元気そうだなアキラは」
電話の向こうから聞こえる野太い声に自然と笑みがこぼれる。