夜と紅と蒼と……
そんな様子の蒼太を隣に腰掛けて見ていた彼女が
「あたしよりは若いとは思ったけど、まだ二十一とは思わなかったな」
そう言って、にまっと笑った。
笑いかたやしぐさが、いたずらっぽい少年の様だ。
笑顔と共に吐かれた彼女の台詞に軽く脱力する。
「老けてるってこと?」
「うーん……老けてるって言うか……なんか若々しさにかけると言うか……あ! でもなかなか男前だよ。背も高いし!」
言いかけた彼女が途中でちょっと慌てて言い直す。
蒼太は苦笑いした。
「気にしなくていいです。よく言われるし……」
「~よく言われるんだ?」
蒼太の言葉を聞くと彼女はクスリと笑った。
「ええ……」
――実際、本当の年齢より上に見られる事は多い。
『若々しくない』と、仕事場の人にもよく言われる。
確かに、自分には同年代の若者の大多数が持ち合わせている活発さらしきものが欠けている。
蒼太自身、ある程度の自覚はあった……
「綺麗だよね」
返した蒼太の声の力のなさに気がついて話題をかえようとしたのか、不意に彼女が空を見上げて呟いた。
「夜の空ってさ」
彼女にうながされるまま、蒼太は視線を頭上へと向けてみる。
空は、深い蒼い闇に優しい光をたたえて、静かに公園を見下ろしていた。