夜と紅と蒼と……
「緑からあなたの話を聞いた時、私はあなたにとても興味を持ちました」
「あたし……?」
不意に自分の事に話が及び、紅葉は戸惑った。
「あの子は、優しいが何処か他人を寄せ付けないところがある、そんなあの子が人と住んでると聞いて意外でした。どんな人だろうと思いました」
そう言って、熊蔵はじっと紅葉の目を見つめる。
「あなたに会って、納得しました」
その穏やかな色を湛えた黒い瞳を細めて熊蔵は言った。
「紅葉さんは痛みを知る人だ。その姿……今まで、随分つらい思いをしてきたでしょう?」
「……そんなこと。あたしは両親元気だし、こんなナリで生まれた割には、わりと周りに恵まれてると思うし」
紅葉は頭を振って否定する。
「なるほど、あなたはなかなか強い人のようだ」
熊蔵は紅葉の言葉に静かに頷きながら、じっと紅葉を見つめている。