心を全部奪って
「ごめん…」


突然頭上に落とされた言葉に、ハッと目を開けた。


「怒鳴ってばっかで、ごめん…」


ど、どうしたんだろう。


急に、謝ったりなんか…。


「でも、俺が怒るのには理由があるんだ」


理由…?


ただ、頭ごなしに怒ってるわけじゃないってこと…?


「俺が考えてること、もうわかるだろ?」


「え…?」


「俺…。

あんたに不倫をやめて欲しいって思ってる…」


思わずパッと顔を上げると、霧島さんはひどく悲しそうな目をしていた。


「やめて欲しいから。

だから、色々連れ回したんだ。

工藤課長には絶対出来ないことをしてやれば、わかってくれるかなって」


やっぱり…。


やっぱり、そうだったんだ。


あえて私のために、そうしてくれてたんだ。

< 106 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop