心を全部奪って
「頼むから、もうやめて欲しい…。

あんたと工藤課長が不倫しているのを知って、

見て見ぬフリだって出来たけど。

同じ部署になった今、やっぱりどうしても見過ごせないんだ。

あんたが不幸になるのを、見たくないんだよ…」


「霧島さん…」


やっぱり彼は、いい人なんだ。


居酒屋で会ったあの人達みたいに。


でも…。


「ごめん…なさい。

それでも私、やっぱり工藤さんとは別れられない」


「ど、どうして…?」


「好き…だから。

たとえどこにも出かけられなくても。

会いたい時に会えなくても。

いつか別れなくちゃいけないこともわかってる。

でもそれは、工藤さんが私に飽きた時がいい。

自分から別れようとは思わない」


私の言葉に、霧島さんがひどく顔を歪めた。

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