心を全部奪って
「そんな。

それじゃまるで、ただの都合のいい女じゃねぇか。

そこまで成り下がっていいのかよ!

そんな態度だから、アイツに利用されるんだよ!」


「利用?」


「利用されてるに決まってるじゃないか!

人目を忍んで会うなんて、これほど気分が盛り上がることはないからな。

奥さんと倦怠期のアイツには、ものすごい刺激的なんだろうよ」


「やめて!」


「愛してるって言われるだろう?

何度も言われてるはずだ」


「そ、それが何?」


「そんな言葉、鵜呑みにしやがって。

そんなベッドの上で言われる言葉なんかな、その場限りの言葉なんだよ。

あんたを繋ぎ止めるために、そう言ってるだけ。

そこに本当の愛なんかあるわけないだろう?」


「お願いだから、やめてよ…」


「だって、本当に愛してたら。

奥さんと別れてだって、

あんたの元に行くはずだろう?」


もう、やだ。


どうしてこの人は、こんなふうに。


私の心をえぐるの?


「どんなリスクを犯したって。


あんたを優先するはずだろう?」

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