心を全部奪って
「こんなふうに、じっくり愛されたことある…?」


そう言いながらも、霧島さんのキスは止まる事を知らない。


「限られた時間の中で焦ったように愛し合うのは確かに刺激的だろうけど…。

時間を気にしないで、眠くなるまで安心して愛し合うのも悪くないだろう?」


どういうこと…?


一体、何が言いたいの…?


「充分満たされてる…?

抱き合った後すぐに帰られて、寂しくないのか…?」


「…………っ」


どうして…。


どうしてこの人はこんなふうに、


一番言って欲しくない言葉を


あっさり口にするの…?


工藤さんとはいつも、


会えなかった時間を埋めるように、


求め合うように激しく愛し合っていた。


それはそれは熱い交わりで。


身も心も溶けていきそうだったけど。


でも終わった後の寂しさは、


どうやったって埋まらない。


次に会うまで思いばかりが募って、


会ってまた爆発させる。


その繰り返しで。


満たされることを知らないの…。

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