心を全部奪って
だけど後悔はしない
チリンとドアに付いた鈴が鳴る音がする。
足を踏み入れたその直後。
「いらっしゃい、拓海」
低く優しい声で出迎えてくれる一人の男性。
「よう。義兄さん」
「待ってたよ。座って」
そう言って彼が促してくれたのは、真っ白い美容椅子。
「あれ?
今日、姉ちゃんは?」
「あぁ。
つわりがつらいから、部屋で休んでるんだ。
俺で大丈夫?」
「いい。
むしろ、義兄さんがいい」
「なんで?」
きょとんと鏡越しに首を傾げる義兄さん。
「姉貴の実験台になるのは、もうイヤだよ」
「ははっ。実験台って。
あれでもウチの奥さんのカラーリングの腕は確かだよ。
じゃあ今日は、髪色どうする?」
そうだなあ…。
「黒に近い茶にして」
「黒?」
「落ち着いた色がいい…」
若くて元気なイメージじゃなくて。
落ち着いた
大人の雰囲気にして欲しい…。
足を踏み入れたその直後。
「いらっしゃい、拓海」
低く優しい声で出迎えてくれる一人の男性。
「よう。義兄さん」
「待ってたよ。座って」
そう言って彼が促してくれたのは、真っ白い美容椅子。
「あれ?
今日、姉ちゃんは?」
「あぁ。
つわりがつらいから、部屋で休んでるんだ。
俺で大丈夫?」
「いい。
むしろ、義兄さんがいい」
「なんで?」
きょとんと鏡越しに首を傾げる義兄さん。
「姉貴の実験台になるのは、もうイヤだよ」
「ははっ。実験台って。
あれでもウチの奥さんのカラーリングの腕は確かだよ。
じゃあ今日は、髪色どうする?」
そうだなあ…。
「黒に近い茶にして」
「黒?」
「落ち着いた色がいい…」
若くて元気なイメージじゃなくて。
落ち着いた
大人の雰囲気にして欲しい…。