心を全部奪って
「朝倉さん」


課長に呼ばれた私は「はい」と返事をして、課長の元へと急いだ。


「彼、朝倉さんの担当になるから、よろしくね。

席も近い方がいいでしょ?

キミの隣のデスクのPCを移動させて、霧島君の席にするから。

早速、準備してくれる?」


「あ、はい…」


デスクトップ動かしちゃうんだ…。


伝票入力するのに、近くて便利だったのに。


っていうか、あんな重いPCをどうやって動かせって言うんだろう。


そんなことをブツブツ考えながら席に戻ると。


「僕も手伝います」


爽やかな声が耳に届いた。


声の主は、あの霧島さんだった。


「PCは、あっちのラックに移動させるそうです。

僕が動かしますから」


「あ、ありがとうございます…」


助かったー。


全部一人でやらないといけないのかと思っちゃった。


このチームの営業マンは、みんな冷たいから。


なんだかちょっと新鮮だ。

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