心を全部奪って



「あれー?

ちょっとー!

どういうことー?」


仕上がった自分の髪を見て、俺は思わず叫んでいた。


「どうかした?」


「だって、これって…」


全然黒っぽくないじゃん!


かえって、さらに明るい色に染まってないか?


「お前に暗い色は似合わないんだよ。

これから夏だし、明るい色で行け」


「えぇー。でも…」


俺は大人の男になりたかったのに。


「後悔なんて、お前には似合わないよ」


「え…?」


「お前は間違ってはいないよ。

ただ、ちょっとやり方が強引だっただけ。

行動したことに、後悔があるのか?」


「そ、それは…」


多分、ない。


だって。


見て見ぬフリなんて。


絶対出来っこなかったと思うから。

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