心を全部奪って
PCが無くなって空席になったデスクに、早速段ボールを置く霧島さん。


ファイルや事務用品を、引き出しの中に入れているようだ。


「朝倉さん」


「はい」


私はPC入力している手を止めて、霧島さんの方を見た。


「あ、ごめんね。

中断させちゃって。

仕事の用事じゃないんだけどさ」


「はぁ…」


仕事の用事じゃないなら、一体何なんだろう?


サーッとキャスター付きの椅子ごと、私の方に寄って来る霧島さん。


顔が急激に近づいたから、ちょっとビックリした。


「ここの部署ってなんか、みんな怖いよね」


ボソッと小声で話す霧島さん。


意外な言葉に、目を大きく見開いた。


「僕が前にいた部署はさ、みんな仲良くて和やかだったんだけど。

ここは私語もないし、険悪なムードだよね」


「そう…なんですか?」


私はここしか知らないから、よくわからないけど。

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