心を全部奪って
月末にお客様を訪問しても良い回答は得られないからと。


彼は朝からずっとデスクワークをしている。


隣にいるけど、必要以上の会話はない。


それなのにまた事務所と同じように隣の席に座って。


一体、何を考えているのかな。


「朝倉さん」


「はい」


「明後日の夜なんだけど、空いてないかな?」


明後日って、金曜の夜のことよね。


「どうしてですか?」


前を向いたまま、彼の方は見ずに言った。


後ろから見たら、誰も私達が会話しているとは思わないかもしれない。


霧島さんは一度箸をトレーに置くと、


ふぅと長い息を吐いた。



「この前のこと、


きちんと謝りたいんだ…」
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