心を全部奪って
「じゃあ、決まりでいいかな?」


「あ、えと…」


「食事もご馳走する。

せめてものお詫びっていうか。

それくらいさせて欲しい…」


そんな…。


悪いことをしているのは私の方なのに…。


「わかりました…」


私の返事に、霧島さんがホッとしたように息を吐いた。


「じゃあ、金曜の夜に。

俺、取引先から直接行くかもしれないから。

観覧車の下で待ち合わせにしようか。

時間はまた連絡するよ」


うんと頷いて、私達は食事を再開した。


外の景色を眺めながら、ただ黙々と食べ物を口に運ぶ私と霧島さん。


何も会話はなかったけど、


一人ぼっちじゃない気がして、


心がなんだか温かかった。




その時だった。
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