心を全部奪って
「あーーー。拓海じゃーーん」


甲高い声に振り返ると、霧島さんの隣に立つ女性が一人。


キャラメル色の華やかなウェーブヘアに、ハッキリとした顔立ち。


一体どこの部署の人…?


「珍しいねー。

拓海が社食にいるなんてー」


霧島さんにピッタリ身体をくっつけるように、カウンターテーブルにもたれかかる女性。


彼女が動くたびに、甘ったるい香水の匂いが漂って来る。


「ねぇ。

今度の金曜、同期の飲み会があるよ。

拓海、行くでしょ?」


彼女の言葉に、ドキッと心臓が跳ね上がった。


今週の、金曜日…?


「あー、ごめん。

俺、今回はパス。

予定が入ってるんだ」


予定…。


それって…。


さっき私とした


あの約束のことだよね…?

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