心を全部奪って
「カルピスサワーと梅酒サワーお待たせしました」
「はい、どうもー」
「拓海君、ごめんね。
今日お客さん多いから、カウンター席いっぱいだわ」
「いいよ、全然」
「ゆっくりしていってねー」
そう言ってアルバイトの女性が、にっこり笑って立ち去った。
今私は、霧島君と一緒に居酒屋ナオトに来ている。
平日に来るのは初めてだけど、日曜日とは違ってお客様がいっぱいで驚いた。
カウンター席が空いていないから、仕方なく奥のテーブル席に座った。
「食べるもの適当に頼んじゃったけど、いい?」
「うん、もちろん。
だってここのメニュー、どれもおいしいから」
「とりあえず、乾杯しようか。
おつかれー」
「お疲れ様です」
私と霧島君は、カチンとグラスを合わせた。