心を全部奪って
歓迎会は2時間ほどでお開きになって、


お店の前で解散になった。


部長と2人の課長と営業マン数名は、これから女の子のいるお店に行くみたいだけど。


私は亜由美先輩にお疲れ様でしたと手を振って、地下鉄の駅へと急いだ。


こんなに早く終わるなら、工藤さんに会えたかもしれないのに。


もしかしてまだ社内にいたりして。


メッセージを送ってみようかな。


駅のホームでカバンからスマホを取り出していると、ガタッと妙な音が辺りに鳴り響いた。


その音のした方向を見てみると、エスカレーターの近くでうずくまる男性が一人。


「え…?」


あれってもしかして…。


「霧島さん!」


ビックリして、慌てて駆け寄った。


「大丈夫ですか?」


「ん~?」


頭を抱えたまま、顔を上げる彼。


「朝倉しゃん…?」


開けきらない目で私の名を呼ぶと、うーっと気持ち悪そうにまた顔を伏せた。


「完全に酔っ払ってますよね…」


「うん…。部長にかなり飲まされちゃって」


「あー…」


確かに部長の周りだけ、やたらと盛り上がってたよね。

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