心を全部奪って
「飲めないなら、断らなきゃダメじゃないですか」


部長は底なしなんだから、同じように飲んでたら確実に潰されちゃう。


「うーん。

そうなんらけろー、なんか断れなくて…」


ろれつが怪しいよ、すでに。


大丈夫なのかな?


っていうか、知らなかった。


自宅が私と同じ方向だったなんて。


そうこうしているうちに、電車がホームに入って来てしまって。


もうすぐドアが開くっていうのに、霧島さんはそこから全く動けないようだった。


あーもうっ。


しょうがないな。


「立てますか?肩貸しましょうか?」


「うー、ごめんねー」


霧島さんを支えながらなんとか電車に乗り込むと、


空いていたシートに横並びに腰掛けた。


電車、空いてて良かった。


満員電車だったら、多分立っていられないぞ、彼。


「ありがとねー」


頭を垂れて、目を閉じている霧島さん。


なんだか本当につらそう。


家に帰れるんだろうか。

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