心を全部奪って
「どうやって消したらいい…?」


そう言うと彼は、私の肩にちょこんとおでこを乗せた。


「なぁ。

どうやってあんたを忘れたらいいんだよ…。

頼むから、教えて…。

教えてくれよ…」


耳元に響く涙声。


その声を聞きながら、私も涙を流していた。


「ごめんなさい…。

ごめんなさい…っ」


もう、それしか言えない。


いつも明るくて元気な霧島君を、


こんなふうにしてごめんなさい。


私と霧島君は、


出会わない方がよかったのかな。


出会わなければ、


霧島君をこんなに傷つけずにすんだのかな…。


不倫をしていること。


どうしてよりによって、あなただけに知られてしまったんだろう。


どうしていいかわからずに、


私達は立ち尽くしたまま、


しばらく二人で泣いていた。


あまりに悲しくて切ない、


月曜の午前だった。

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