心を全部奪って



「先輩。これ、そろそろ発注しておいた方がいいですよね?」


「そうねー。これじゃ今週持たないわね。

わかった。じゃあ私早速注文しておくわ。

日高さんはこのまま、郵便物を配ってくれる?」


「はい、わかりました」


備品室に鍵をかけ、先輩はエレベーターホールへと向かった。


「さて、配るかなー」


各部署に配るための郵便物。


それが大量に入った箱を持ったまま歩き始めたその時。


前方に拓海の姿が見えた。


やった、ラッキー。


この時間に拓海に会えるなんて。


こっそり付いて行って、ワッと驚かせてやろうかしら。


そんなことを思っていたら、拓海の後ろを歩く女性社員の姿が…。


「え…?」


あれって…。


例の営業アシスタントじゃない?


一体、二人でどこに向かっているのかしら。


二人が向かった先って、会議室と給湯室しかない場所だよね。


会議の準備でもあるのかしら?


あたしはこっそり二人の後を追った。

< 194 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop