心を全部奪って
「先輩。これ、そろそろ発注しておいた方がいいですよね?」
「そうねー。これじゃ今週持たないわね。
わかった。じゃあ私早速注文しておくわ。
日高さんはこのまま、郵便物を配ってくれる?」
「はい、わかりました」
備品室に鍵をかけ、先輩はエレベーターホールへと向かった。
「さて、配るかなー」
各部署に配るための郵便物。
それが大量に入った箱を持ったまま歩き始めたその時。
前方に拓海の姿が見えた。
やった、ラッキー。
この時間に拓海に会えるなんて。
こっそり付いて行って、ワッと驚かせてやろうかしら。
そんなことを思っていたら、拓海の後ろを歩く女性社員の姿が…。
「え…?」
あれって…。
例の営業アシスタントじゃない?
一体、二人でどこに向かっているのかしら。
二人が向かった先って、会議室と給湯室しかない場所だよね。
会議の準備でもあるのかしら?
あたしはこっそり二人の後を追った。