心を全部奪って
裕樹アニキの言う通りだ。


ただ、朝倉を繋ぎ止めたいがための演出だったのかもしれない。


「彼女に聞いてみろよ。

それを確認するまで、諦めるのはまだ早いよ」


「うん。

わかった。

俺、頑張る」


「よし。それでこそ拓海だ」


義兄さんは、にっこり笑った。


「お待たせしました。

牛カルビ定食と天ぷらそばになりまーす」


ちょうどいいタイミングで料理が運ばれて来て、俺と義兄さんはいただきますと言って食べ始めた。


「あーうま。

さっきまで腹減ってなかったからなー。

俺も、もっとガッツリしたのを頼めばよかった」


なんか急に食欲が湧いてきた。


「いいよ。俺の肉半分やるから」


「まじー?アニキ最高ー!」


ガツガツ食う俺の顔を、裕樹アニキは優しい瞳で見つめていた。


まだ諦めたりしない。


いや、諦められるはずないんだ。


だって…。


本当にすげー好きだから…。

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