心を全部奪って
なんで俺の名前を呼んだ?


工藤課長は依然前を向いたまま。


俺は下手に身動きもとれずに、ただ工藤課長の次の行動を待っていた。


「キミ、だよな?」


「え…?」


な、何が俺?


ワケがわからずに、目がパチパチしてしまう。


「キミなんだろ?

ひまりの身体に、キスマークをつけたのは」


ドクンと。


心臓が鈍い音を立てた。


そう…。


以前、俺の部屋にアイツを入れた時。


俺はひそかに、アイツの身体にキスマークをつけていた。


わからないように。


だけど、数ヶ所。


身体のあちこちに。


「ひまりは多分、気づいていない。

全て本人からは、気づきにくい場所だった。

しかも、かなり際どい場所にね」


工藤課長の言葉に、怒りが感じられる。


工藤課長は、俺が朝倉を好きだってことに気づいてるんだ。

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