心を全部奪って
storm
ガラガラとドアを開けて、足を一歩踏み入れる。
「いらっしゃーい」
元気に迎えてくれるのは、霧島君の親友のナオトさん。
「こんばんは」
「こんばんは、ひまりちゃん。
拓海ならもう奥の席にいるよ」
「ありがとうございます」
ぺこり頭を下げて店内を歩くと、一際明るい柔らかそうなブラウンヘアの男性の後ろ姿が目に入った。
「霧島君」
私がそう呼ぶと、くるりと振り返る彼。
「待ってたよ。座って」
「うん」
言われるまま、霧島君の向かいの席に腰かける。
真っ直ぐ前を向くと、優しい笑顔の彼と目が合った。