心を全部奪って
「俺さ。

明日からメーカー研修で社内にいないんだ。

次に出社するのは、来週の月曜になるかな」


「あ、そうだったね。

じゃあ明日、朝早いのかな?」


「うん。結構早い」


「じゃあ、早めに帰らないと」


「いいよ、別に」


「え、でも…」


「いいんだって。

新幹線で寝れるし」


「そう?」


「うん…」


なんだろう。


なんとなく、ぎこちない。


なんだか落ち着かなくて、チューハイを口にした。


「なぁ、朝倉」


「ん?」


「工藤課長ってさ、

本気で奥さんと別れようとしてる?」


「え…?どういうこと?」


「いや、あのさ。

離婚届の紙を見せられたって言ってたけど。

それってただ単に、朝倉と別れたくないから用意したんじゃないのかなって思って…」


霧島君の言葉に、私は大きく目を見開いた。

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