心を全部奪って
「拓海ー。
そんなハイペースで飲んで大丈夫なのー?」
同期の飲み会。
行く気はなかったけど、前回途中で抜けたからとしつこく誘われて。
仕方なく参加した。
なんだか話す気も起きなくて、俺は端の席で一人黙々とお酒を飲んでいた。
「それにしても、ビックリだったよね。朝倉って子」
“朝倉”と聞いて、ピクリと眉が上がる。
「だよねー。
おとなしそうな顔してさー、工藤課長にしつこく迫ってたんでしょう?」
「まぁ気持ちはわかるよ。
あれだけのイケメンだもん。
でも既婚者だよ。
社内でそんなことしちゃダメでしょー」
「朝倉さん、既婚者なんかに行かずに俺のところに来れば良かったのに。
朝倉さんに迫られたら、俺なら即効で落ちるね」
「男ってバカだよねー。
あんな猫被った子のどこがいいのか」
「ああいう子は危険だからさ。
辞めさせられて正解だったんだよ」
無意識に指に力が入る。
こいつら、
好き放題言いやがって!