心を全部奪って
「私は、朝倉さんが工藤課長を誘惑したんだと思うな。

だって、工藤課長がそう言ってるんでしょう?

迷惑だったって。

私は工藤課長を信じるわ。

大体、中途採用の子なんて信用出来ない。

前の会社でも、何かトラブルでもあったんじゃない?」


日高の言葉に、女子社員全員が同意する。


全く。


女子っていうのは、おとなしそうな美人をすぐに標的にする。


アイツがモテるから、嫉妬してるだけだろ?


「日高。

じゃあ正直に言うよ」


「な、何…?」


「俺な、

朝倉が好きだったんだ」


俺の言葉に、どよめく同期達。


「拓海。

ど、どうしたの?」


日高が焦ったように俺の腕を揺らす。


「朝倉が不倫しているって知ってたけど、俺はあきらめたくなかった。

だから、不倫なんてよくないって必死に説得したし。

どうにか俺を見て欲しくて、頑張ってアプローチもした。

工藤課長を好きなままでもいい。

それでも好きだって伝えて…。

そんな俺に折れたのか。

ついに先月。

彼女が、工藤課長と別れる決意をしたんだ」

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