心を全部奪って
「あのね、お父さん」


ここはもう、嘘をついてもしょうがない。


いつかはバレてしまうのだから。


私は覚悟を決めて、すぅと息を吸った。


「有給をとって来たっていうのは、実は嘘なの…」


「え…?」


父の視線が、テレビ画面から私の方へと移る。


「本当は先週仕事を辞めて、今は無職なの…」


お父さん、怒鳴るかな。


前回の転職の時は、


直接話すのが怖くて、お母さんから話してもらったんだよね。


また仕事を辞めたなんて聞いたら、きっと呆れるだろうな。


しかも今回は、前回よりも短い1年未満。


お前は根性がないのか、とか。


甘えてるんじゃないのか、とか。


きっと怒るに違いない。


だけど、お父さんはいたって冷静に、そうかとだけ呟いた。

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