心を全部奪って
「お父さん、怒らないの?」


えっ?と父が意外そうに目を見開く。


「だって、いつもだったら、すごく怒るから」


「あぁ…。

別にお父さんは、そんなことでひまりを怒ったりしないよ。

ひまりだって、もう大人なんだし。

仕事を辞めたってことは、それなりの事情があってのことなんだろう?」


思いがけない言葉に、私はただただ驚いていた。


「なんだか、びっくり…。

きっと叱られると思ったから」


「お父さんってそんなに怒るイメージがあるかい?」


「う、うん。

毎日叱られていたような気がする。

お父さんがいると怖くて。

いつもビクビクしてた」


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