心を全部奪って
私の言葉を聞きながら、お父さんがフッと鼻から息を吐く。


「そう、だね。

ひまりには、少し厳しく言って来たかもしれない」


いつも私を叱る父。


とにかく怖くて、父親が帰る前に夕食もお風呂も済ませて、自分の部屋に逃げ込んでいた。


「私ね、

お父さんに本気で嫌われているんだと思ってたよ。

私が男じゃないから、だからお父さんは私を嫌っているんだって…」


私が男だったら、跡継ぎになれたし。


お父さんが好きな将棋を、一緒にさすことだって出来ただろうに。


「それは心外だな。

お父さんはひまりを嫌いだなんて、一度も思ったことはないよ」


「そう…なの?

じゃあ、

どうしてあんなに厳しくしていたの…?」


私の問いに、父が目を細める。


その目尻のシワは、三年半前より随分増えたような気がした。

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