心を全部奪って



「おいっ、霧島!」


突然声をかけられて、キーボードに置いていた指がピクッと跳ねた。


やべ。


今、すげぇボーッとしてた。


「おぉ、緒方。どうした?」


階の違う緒方が、わざわざ俺の部署にまで来るなんて珍しい。


「ちょっと顔貸して」


「あ?あぁ…」


よくわからないまま通路に出ると、緒方が俺にそっと耳打ちした。



『工藤課長の処分が決まった』



人事課に所属している緒方の言葉に、ゾクッと背中に悪寒が走った。


「まじか!いつ?」


「今日の昼、辞令が貼り出されるはずだ」


朝倉の自主退職。


もちろんそれに関しては、仕方が無い部分もあるのかもしれない。


だけど、工藤課長に何もお咎めがないこと。


それだけは許せなかった。


だから俺は、社員達の意見を集めて抗議したんだ。


それが、ついに実を結ぶ時が来たんだ……!

< 260 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop