心を全部奪って
「おいっ、霧島!」
突然声をかけられて、キーボードに置いていた指がピクッと跳ねた。
やべ。
今、すげぇボーッとしてた。
「おぉ、緒方。どうした?」
階の違う緒方が、わざわざ俺の部署にまで来るなんて珍しい。
「ちょっと顔貸して」
「あ?あぁ…」
よくわからないまま通路に出ると、緒方が俺にそっと耳打ちした。
『工藤課長の処分が決まった』
人事課に所属している緒方の言葉に、ゾクッと背中に悪寒が走った。
「まじか!いつ?」
「今日の昼、辞令が貼り出されるはずだ」
朝倉の自主退職。
もちろんそれに関しては、仕方が無い部分もあるのかもしれない。
だけど、工藤課長に何もお咎めがないこと。
それだけは許せなかった。
だから俺は、社員達の意見を集めて抗議したんだ。
それが、ついに実を結ぶ時が来たんだ……!