心を全部奪って
野球なんてやったことないし、やりたくないって何度も言ってるのに、無理矢理バッティングなんかさせられて。


最初は本当に腹が立ったんだから。


でもなんだかそれも、


もう…遠い昔のよう。


東京を離れることに、なんの未練もないけれど。


唯一、心残りがあるとしたら…。



『朝倉』



「…………」



『ずっとそばにいてやるから…。

泣きたかったら、いくらでも泣かせてやるから』



「霧島、君…」



声に出して名前を呼んだら、


なぜか涙がぽろりと流れて来た。


どうしてかな?


あのまぶしい笑顔が、なぜか恋しい。


怒った顔でさえ、なんだかひどくなつかしいの。




どうして…?
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