心を全部奪って
霧島君…。


私、本当はね。


あなたのその強引さが、戸惑いつつも少し心地良かったの。


一緒に見た夜景も、


バッティングセンターも、


砂浜でやったゲームも、


一緒に乗った観覧車も。


さほど珍しい場所でもないのに、


私にとってはすごく新鮮だった。


すごく楽しかったの。


ドライブだって、昔付き合った人と何度もしたけど。


あんなふうに笑ったことは一度もなかった。


あなたといたら、きっと毎日笑顔でいられるんだろうね。


野外で遊ぶのは苦手だけど、霧島君とならきっと楽しいだろうね。


でも…。


もうダメだよね。


別れるって約束したのに、工藤さんのところへ戻った私なんて。


あれだけ霧島君が忠告してくれていたのに、結局工藤さんに裏切られてしまう私なんて。


もう情けなくて恥ずかしくて。


どんな顔をして霧島君に会ったらいいかわからない。


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