心を全部奪って
「ゆっくり話がしたいんだ。

でも俺、今仕事中だし落ち着かないから。

夜まで俺の部屋で待っててもらえないか?」


「霧島君…」


「頼むよ。

どうしても、話したいんだ…」


話…か。


私も話したい事がある。


今までのお礼を、ちゃんと伝えたい。


「あの、とりあえず。

今から鍵を返しに管理会社に行くね」


「あ、うん…」


部屋に戻って窓を閉めると、私は玄関でヒールのついたサンダルを履いた。


「それ、運んでやるよ」


そう言って霧島君が、私のトランクを外に運び出した。


私もショルダーバッグを手にして外に出る。


ガチャンと鍵をかけると、霧島君とともに階段を下りた。

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