心を全部奪って


ゴロゴロと、アスファルトにトランクを運ぶ音が鳴り響く。


朝倉は俺の後ろを付いて歩いていた。


とりあえず、ホッとした。


朝倉がいてくれたことに。


本当は、感激して泣きそうだった。


出来ることなら


朝倉の腕を引いて、力いっぱい抱きしめたかったけど。


空室になったアパート。


それを見た途端、急激に現実に引き戻された。


本当に引っ越してしまうんだって…。




とにかくゆっくり話をして、説得するしかない。


聞き入れてくれるかどうかわからないけど。


なんとか東京に踏み止まってもらわないと…。

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