心を全部奪って
管理会社は、地下鉄の駅のすぐそばにあった。


そこで鍵を返すと、俺と朝倉は一緒に地下鉄に乗った。


3駅しか違わない俺と朝倉の最寄り駅。


もう二度と一緒に乗れないかと思っていたから、胸がいっぱいだった。


チラリ、隣に座っている朝倉を見てみる。


今日は引越しだったからだろうか。


朝倉にしては珍しく、白いTシャツにクロップド丈のデニムを履いている。


そんなシンプルな格好でも、彼女にはとてもよく似合う。


アップにしたおだんごヘア。


そのせいで際立つ白く細いうなじ。


思わずゴクリと喉を鳴らした。


や、やべぇ。


誰も見てなかったら、吸血鬼みたいに吸い付いてしまいかねない。


ついに暑さでやられ始めたか?


俺よ。


頼むから落ち着いてくれ。


ここで暴走したら、全てが台無しだ。


とにかく冷静に、慎重に!


失敗は絶対に許されないんだから。

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