心を全部奪って
「あれ?なんかいい匂いがするんだけど」


部屋に入った途端、むっちゃ美味しそうな匂いが漂って来た。


「うん。夕飯作ってた」


「うっそ。まじ?」


どうしよう。


すげー感動なんだけど。


「え?でも冷蔵庫の中、何も入ってなかっただろ?」


「うん。だから、近所のスーパーまで材料を買いに行ったの」


「スーパー?」


場所がよくわかったな。


結構わかりづらいところにあるのに。


「とりあえず俺、汗びっしょりだからシャワー浴びてくる」


「うん」


クローゼットからTシャツとハーフパンツ、下着を取り出して風呂に向かう。


シャワーをキュッとひねると、ワシャワシャとシャンプーを始めた。


朝倉の手料理かぁ。


「まいったな…」


どうしてこれが浮かれずにいられようか。


クールでいられるのも、もう時間の問題かもしれない。

< 305 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop