心を全部奪って
「ねぇ、霧島君」


「ん?」


「私が作った料理、口に合わなかった?」


食べてる時、何も言ってくれなかったから。


あんまりおいしくなかったのかなって、実は気になっていた。


「うまかったよ。すげーうまかった」


「えっ、そうなの?」


思わずパッと顔を起こした。


「何も言ってくれないから、てっきりまずいのかと…」


「バッ。違うよ」


「じゃあどうして、何も言わずに黙々と食べてたの…?」


「ん?んー」


そう言った後、霧島君が私の髪に触れた。


「だってさ、これで最後にしようとしてるってわかったから…。

そう思ったらすげーショックで。

どうやって説得しようかって、そればっかり考えてた」


「霧島君…」


「でも、ちゃんと味わってたよ。

うまかった。

また作って」


「うん…。そんなのいくらでも」


良かった。


気に入らないわけじゃなかったんだね。

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