心を全部奪って
真っ赤に染まったひまりの頬を優しく撫でてやる。


ひまりは恥ずかしそうに、目を伏せていた。


「怖い…?」


「そんなこと、ないけど…」


「じゃあ、何を迷ってる?」


強引にベッドに持ち込んだ方が、彼女にとっては気が楽なのかもしれないけど。


俺は彼女の方から、心を開いて欲しかった。


「ホントに、いいの…?」


「えっ?何が?」


「私なんかで…、いいの…?」


「は?」


何を言ってんでしょ?この子は。


「いいに決まってんじゃん。

好きな子とそうなりたいっていうのは、当然の願望でしょうが」


もう何度、想像の中でひまりを抱いたかわからないくらいなのに。


「だって私…。

工藤さんと…」


ひまりの言葉に、ハッとした。


それと同時に、日高の言っていたあの言葉を思い出した。




『もうすっかりあの子の身体には、工藤課長が染み付いてんのよ』



そうか…。


ひまりは、そのことを気にしているんだ…。


チラリひまりの顔を見ると、


今にも溢れそうなくらい、


目にいっぱい涙を浮かべていた。

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