心を全部奪って
「とにかく…」


そう言って霧島君が、私の肩に両手を置いた。


「明日の朝帰るのは、却下だから」


「うーん。でも…」


両親になんて言えばいいんだろう?


やっぱり東京に残りますって言う?


仕事も見つかっていないのに?


ここはやっぱり、恋人がいますって言わなきゃダメだよね?


どうしたらいいんだろう?


色んなことをグルグルと考えていたら、霧島君が私の顎に手をかけた。


「帰るなんて、絶対許さない…」


クイっと上を向かされて、すぐに唇を塞がれた。


強く押し当てられる唇。


何度も角度を変えながらキスを交わしているうちに、


気が付けば床を背にしていた。


一旦離れた霧島君の唇が、私の頬から顎の方へと移動していく。


熱い吐息が、私の首筋にかかったかと思ったら。


その後、キリッと鈍い痛みが走った。

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