心を全部奪って
「あ、やべ」


霧島君がパッと上半身を起こす。


なになに?


やばいって何が?


「すげぇ目立つとこに、キスマークつけちゃった」


ベッと舌を出す霧島君。


「えぇぇっ?」


慌ててガバッと起き上がる。


ローテーブルの上に置いておいた自分のポーチからコンパクトを取り出し、自分の首を映し出してみた。


「な、なにこれ?」


真っ赤になってるし、ものすごく大きいじゃない!


「これじゃあ、さすがに実家には帰れないよなあ?」


「ちょっと!霧島君?」


わざとだ!


ぜーーーったいにわざとだ!


っていうか、こんなんじゃ外も歩けないじゃないか。


ぶぅと膨れていたら、霧島君がぽんぽんと私の頭を撫でた。


「一旦、塾の仕事が始まったらさ。

またこっちに戻って来たいって思った時には、辞めるに辞められなくて戻れなくなるよ?

会えなくなって、気持ちが離れるのだけは絶対イヤだから…」


「霧島君…」

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