心を全部奪って
「やっぱ正社員がいいよなあ?

まぁ知り合いに聞けば、色々仕事はあるけどさ。

ひまりちゃん、企業はイヤなんだよね?」


「あ、はい……。そうですね」


こんなこと言うと、すごく気が引けるけど。


「その気持ち、すげーよくわかるよ」


ナオトさんが大きく頷いた。


「俺も会社員が性に合わなかったからねぇ。

今はラッシュの時間帯に電車なんか乗ることないから、すげーラクだよ」


「そうなんですね」


私もラッシュはすごく苦手。


あの時間帯を避けられたら、どんなにいいだろうって思うもの。


「ひまりちゃんはさ、何してる時が一番楽しいの?

俺はさ、会社が休みの日に料理を作ってる時が一番楽しくてね。

それがそのまま職業になったって感じなんだけど」


「えっ?ど、どうかな。

私、あんまり趣味とかなくて」


「美容関係とかは?

女の子だし、興味あるんじゃない?

服とか雑貨とかは?」


「う、うーん。

人並みくらいでしょうか……」


ど、どうしよう。


なんかこうして改めて考えてみると、


私ってやっぱり


つまらない女?

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