心を全部奪って
「どう?なんか良い案あった?」


仕事が落ち着いたのか、ナオトさんがまた声をかけてくれた。


「うーん…」


思わず苦笑いをしてしまう。


「まぁ、ひまり。

焦らずいこうよ。

ひとまずアルバイトでもしながらさ、ゆっくり自分に合う仕事を探したっていいじゃん。

これじゃなきゃって、決め付けることはないんだから」


霧島君が優しい笑顔で言った。


「ヒュ~。

拓海、良い事言うねぇ。

ホントそうだ。焦ることはないよ。

親ってさ、子供が笑顔で幸せそうにしてりゃ、別に職種は問わないんじゃないかな?

俺の親も、結局そうだったんだ。

転職する時、俺はすげー悩んで心配してたのに、店を持つって言ったら、お前の人生だ、思うようにしろ、だって。

会社員時代の元気のない俺より、好きな事をしていて欲しかったみたいだよ」


そうなんだ……。


両親を説得するために、それなりの職業をって考えていたけど。


焦って見つかるものでもないし。


まずはアルバイトからでも、遅くはないよね。


好きな事はよくわからないけど、私に出来る事から……。

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