心を全部奪って
その日から、顔見知りになった私達。


オフィスで偶然出会えば、たわいもない会話を交わした。


日を追う毎に、彼に心惹かれていく自分がいて。


それは彼も同じだと、


その熱い視線で気づいていた。


工藤さんに誘われ、二人でお酒を飲みにバーに行くこと数回。


私達が一線を越えるまでには、そう時間はかからなかった。


初めて身体を重ねた夜、


工藤さんの左手薬指にある指輪を見ながら、


私は甘い声を上げていた。


もちろん知っていた。


工藤さんに奥様がいることを。


だけど、


走り出した思いは止められるはずもなくて。


気がつけば、


罪を犯したあの日から、


半年の月日が流れようとしていた。

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