心を全部奪って
「まだ終わらないの?」
既に帰る準備をしている亜由美先輩が、私の席まで来て言った。
「はい。今日も残業になりそうです…」
あのFAXを皮切りに、私の仕事は日を追う毎に増えていた。
「すごいわねー、霧島君。
今までの取引先の受注数増やしたり、新規の顧客獲得もハンパじゃないし。
部長が彼を第一営業部に引っ張って来た理由がよくわかるわね」
「ですよねー…」
「なによ。なんかやけに棒読みじゃない」
だって。
だってだって!
月末でもないのに、鬼のように忙しいんだもの。
毎日こんなに残業していたら、
工藤さんに会えなくなっちゃう。
霧島のバカーーー!
もう、泣きそうだよーーー!