心を全部奪って



「まだ終わらないの?」


既に帰る準備をしている亜由美先輩が、私の席まで来て言った。


「はい。今日も残業になりそうです…」


あのFAXを皮切りに、私の仕事は日を追う毎に増えていた。


「すごいわねー、霧島君。

今までの取引先の受注数増やしたり、新規の顧客獲得もハンパじゃないし。

部長が彼を第一営業部に引っ張って来た理由がよくわかるわね」


「ですよねー…」


「なによ。なんかやけに棒読みじゃない」


だって。


だってだって!


月末でもないのに、鬼のように忙しいんだもの。


毎日こんなに残業していたら、


工藤さんに会えなくなっちゃう。


霧島のバカーーー!


もう、泣きそうだよーーー!

< 43 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop