心を全部奪って
恋っていうのは、時に思わぬ力を発揮するもので。


私は自分でも驚くくらいに、スイスイと事務処理をこなしていた。


このペースなら今日は早めに上がれそう。


今夜は何を作ろうかな?


クリーム系のパスタにしようかな?


考えるだけでウキウキしちゃう。


そうこうしているうちに仕事は全て終わり、もうすぐ定時になるという時。


1本の電話が入った。


『朝倉?』


こ、この声は……。


「霧島さん。お疲れ様です」


朝倉って…。


呼び捨てかっ!


『あのさぁ、俺の机に封筒がない?』


チラリ、隣のデスクを見てみる。


「あぁ、ありますね」


『これから大事な打合せなんだけどさ。

その書類がないと話にならないんだ。

悪いけどさー、持って来て』


「はぁ?」


『大きな契約になりそうなんだ。

マジ頼むって』


「で、でもそれって、私の仕事の範囲を超えてませんか?」


それよりなにより、今日はもう帰りたいんだよう!

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