心を全部奪って
ピンポンと音がして、エレベーターはどうやら最上階に到着したらしい。


そのフロアには、飲食店が数店舗入っているようだ。


どこも高級そうだけど。


「こっち」


そう言ってまた私の腕を引く霧島さん。


あぁ。


美味しそうな、いい匂いがする。


お腹が空いたな。


そんなことを思っていたら。


「あ…」


こ、これは…!


「すご…い。綺麗」


天井から床まである大きな窓の向こうに広がる大都会の夜景。


キラキラして、まるで宝石箱みたいだ。


「あんまりスペースはないけど、ここから夜景が見られるんだ。

いいだろ?」


「うん。

すごい穴場だね」


タダでこんな夜景が見られるなんて、ラッキーかも?


「こんな場所、今日みたいなことでもない限り来ないだろう?

せっかくだし、見て帰れよ」


「う、うん…」


そう、だね…。


今から急いで帰っても、もう工藤さんには会えないんだし。


少し夜景を見て帰るのも、悪くないかも。

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