心を全部奪って
「今日、ありがとな」


「え…?」


「書類」


「あぁ…」


そのせいで工藤さんに会えなかったけどね…。


でも霧島さんにお礼を言われるなんて。


珍しいことだから、なんだかちょっとくすぐったい。


「あんたのお陰で、最後の一押しが出来た。

佐藤部長、若い女の子が大好きだから。

ヘタに接待でお店とかに行くより、あんたの方が効果的だった」


若い女性が好きなんだ。


どうりで舐めるように見られると思った。


「私は何もしてないわよ。

霧島さんがすごいんだと思う」


「ん?」


「ビックリした。

あんなに人を惹き付ける、わかりやすいトークが出来るなんて。

営業に向いてるのね」


本当にすごいなって思った。


変わった人だと思っていたけど、


営業に関しては尊敬してしまいそうだ。


「別に…。

大したことねぇよ」


ふぃっと横を向く霧島さん。


全く…。


せっかく褒めているのに、素直じゃないよね。


可愛くなーい。

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