心を全部奪って
「んんっ。んーーー!」


ぴったり塞がれる唇。


やだやだ。


人に見られちゃう!


恥ずかしいよ。


やめてーーー。


じたばたと暴れていたら、霧島さんがゆっくりと唇を離した。


慌てて後ずさりすると、バランスを崩して砂浜に尻餅をついてしまった。


「ごちそうさま」


ニッと怪しげに笑う霧島さん。


「な、なんてことするんですかっ!」


「ははっ。お前、顔真っ赤」


「そ、そりゃそうでしょう?」


昼間っからこんな野外で。


「慌て過ぎだよ」


そう言って霧島さんは、堪えきれないようにクスクスと笑った。


そ、そんなに笑わなくても…。


両膝を抱えて、プイッと霧島さんに背を向ける。


ひどい。


からかって楽しんでるんだ。


一体何考えてんのか、さっぱりわからない。

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