心を全部奪って
類友の法則
それから私と霧島さんはしばらく海を見て、自分達が住んでいる地区へと引き返していた。


霧島さんは車を返却すると、行きたい店があるからと、ブラブラと歩き始めた。


なんでもその店は霧島さんのアパートの近くで、大学時代の友達が経営しているのだとか。


ただ今、時刻は17時半を少し回ったところ。


居酒屋らしいのだけど、こんな早くから行ってもいいものなんだろうか?


霧島さんが足を止めたのは、住宅地にひっそりと佇む、なんだかレトロな看板のお店。


「居酒屋ナオト…?」


「じゃあ、入ろう」


ガラガラと扉を開ける霧島さん。


私も続いて後に入ってみると。


「いらっしゃーい」


威勢の良い声が店内に響いた。


「あー、やっぱりお前ら来てたのかー」


突然霧島さんが、カウンター席に座っている男性2人に声をかけた。


「もうすっかり出来上がってますー」


「拓海。ここ座れ、ここー」


なんだか親しげだけど。


このお客さんも霧島さんの友達?

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