心を全部奪って
「ねぇねぇ。

ひまりちゃんってさ、彼氏とかいるの?」


突然、リョウと呼ばれている人が言った。


「え…?」


彼氏…?


恋人はいるには、いるけど…。


不倫している相手を、彼氏と言っていいものかどうか。


どうしよう。


なんて答えればいいのかな。


困って俯いていると。


「いないよ」


私の代わりに答えたのは、なぜか霧島さんで。


「だろ?」


そう言って、私の方を見る霧島さん。


私はこくり頷いた。


「まじでー?いないの~?

こんなすげー可愛いのに~?

あー!

やっぱ拓海、ひまりちゃんのこと狙ってるだろー?」


「ジュン。お前はうるさいなあ、いちいち。

俺の営業アシスタントだよ。

いつも世話になってるから、たまにはねぎらってあげようと思ったんだよ!

俺は優しいからなあ」


「よく言うよ。

ひまりちゃーん。

コイツが困るようなこと言ってきたら、俺らに言いなー。

コイツの恥ずかしい過去、俺らが暴露してやるから」


「リョウ!お前、なんてこと言うんだ!」


えー、ホントにー?


すでに困ってるので、助けてもらえませんか?


っていうか、恥ずかしい過去って。



なんなんだろう?

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