心を全部奪って
「俺、ちょっとトイレー」


そう言って霧島さんが、席を立った。


それにしてもこのお店の料理、どれもすごく美味しい。


しかも、近所でしょう?


友達もいるし、これなら毎週来たくなるはずだわ。


「ねぇ、ひまりちゃん。

本当に拓海の彼女じゃないの?」


カウンター席にいるジュンさんに声をかけられた。


「はい。本当に違うんです。

彼の仕事のサポートをしていて…」


「そっか…。

いや、まじでここに女の子を連れて来たのは初めてだから。

ビックリだったよな?」


ジュンさんの言葉に頷くナオトさんとリョウさん。


「で、でも霧島さんって、モテるんじゃないんですか?」


会社では、女子社員に人気みたいだし。


「なーにあんなヤツに“さん”付けしてんの。

同い年なんでしょう?

拓海って呼び捨てしてやれ」


「い、一応仕事では先輩なんで…」


「マジメだねぇ~、ひまりちゃんは。

まぁアイツ、確かにモテるよー。

学生時代、ファンクラブがあったくらいだからねー。

本人非公認だったけど」

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